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これまでの法話

7月の法話

佗は是吾に非ず

みなさまはじめまして。数あるホームページの中で、よくこのページをお選びいただきました。偶然にしろ、何にしろ、誠にありがたいことです。


東日本大震災より4ヵ月とちょっとが過ぎました。一時、何10万という人たちが避難所暮らしを強いられましたが、今は仮設住宅やアパートなどへ移り、次第に落ち着きを取り戻しています。被災者が仮設住宅に移り始めた4月29日に、民生児童委員でもある私は、他の仲間ととも「レッツゴー.わたり」をたちあげて、当山の駐車場を会場に被災された方々に、仮設住宅などで使うであろう日常のこまごまとした物資を配布するという活動を始めました。

火曜日と木曜日は休みにして、残りの週5日間の開催です。配布を受ける人の数は多く、平均すると170~80人位の人はいたのではないでしょうか。というのも、「レッツゴー」のコンセプトに「新しいものをさし上げたい」という思いがありましたので、揃えてあるものはそのほとんどが新品だったこともあり、評判は良かったと思います。また、今年は毎日がお天気が良く、晴れの日が多くて雨で困ったという日は梅雨の間のほんの数日間だけでした。私の係りは倉庫の管理と、物資の運搬です。運ぶ箱は大きいもの、重い物が多く、小さくて軽いものは少なく、あったとしてもそういうものは一度にたくさん運ぶので、結局重くなってしまいます。汗が地面に滴り吸い込まれていくのを見たとき、道元禅師が中国天童山で修業中に老典座(てんぞ)に教わった言葉、「佗は是吾に非ず」を思い出しました。

天童山の老典座が太陽のカンカン照りつける真昼間、弓のように曲がった腰を杖で支えながら、汗を滴らせて茸を干している姿を道元禅師が見たとき、「どうして下の者や使用人にやらせないのですか」と声をかけられました。その問いかけの答えが「佗は是吾に非ず」の一言だったのです。人がやったのでは私の修行にならないではないか。私の修行は私が骨を折り、私が額に汗しながらやらなければ私の修行にならない。道元禅師は重ねて、「見ればお歳のご様子、なにもこの暑いなかなさらなくとも、涼しくなってからやればよろしいのでは」と続けられ、老典座の一言は「更に何れの時をか待たん」今をおいて他にやる時などない。何とも心地よい老典座の一言です。

その後、レッツゴーわたりは希望者が全員仮設住宅に入居されましたので、本年7月10日をもって終了いたしました。私はなんとその晩に急に熱を出し、倒れこんでしまいました。原因は夏風邪で私は生れてはじめて夏に風邪を引いたのでした。気温は高いし自分の熱はあるし、これが夏の風は長引くといわれる原因かと思いました。いずれにしろ誰も変わってはくれませんし、私が私の風邪を風邪していくしかありません。「佗は是吾に非ず」であります。

宗教法人高音寺


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